こんにちは、もやしししゃもです。
先日、「ビットコインは金持ちだけが富む不公平なシステムだ」というツイートを見かけたので、ビットコインの公平と不公平について考えてみようと思います。
ビットコイナーがビットコインを推していたり、裕福なビットコイナーがいたり、マイクロストラテジーが大量にビットコインを買い集めていたりと、ビットコインをあまり知らない人にとっては怪しいお金の匂いが漂っていることでしょう。
そして、ビットコインを持っていなかったり嫉妬の気持ちから、不公平なシステムだと訴えたり否定する気持ちもわかります。ビットコインにも色々なリスクがありますし、長期的に価値を失っていく可能性もあります。ビットコインが失敗するかの答えは時間経過によってわかってきます。
ただ、ビットコインが不公平かどうかは肯定派、否定派、中立派限らず考える余地はあるかと思います。
所詮は全員がポジショントークです。著者は「Read BTC」というニュースレターを毎週書く程度の肯定派であり、肯定派のポジショントークと思いながら本記事を読んでいただければと思います。(もちろん、意識としては中立を目指します)
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ビットコインは不公平か?
ビットコインは「健全なお金(サウンドマネー)」になる可能性があると言う人もいるくらい、公平性を重視している貨幣システムとされています。
しかしながら、ビットコインは本当に公平なのでしょうか。
個人的な考えでは「一部公平であり一部不公平である」です。公平か不公平かについては完全にどちらかとは言えないという、歯切れの悪い結論になってしまいます。
そもそも、貨幣システムというのは必ず貧富の差が生まれるので、完全に公平なものはありません。完全に公平な貨幣システムができるとしたら、貨幣システムは不要になっていることでしょう。公平を目指すためには、何かしらを不公平にする必要があります。
ビットコインは法定通貨のような貨幣システムに比べて「適切なところを公平にしている」と個人的に考えています。「適切なところ」が人に寄りますが、何が公平で何が不公平かを考えることは大事だと思います。
僕が考える「適切なところ」は下記です。
機会が公平
ルールが公平
ビットコインの公平なところ4選
ビットコインは公平性に細部までこだわっていますが、ピックアップすると下記の4つが挙げられます。
誰でも参加が可能なマイニング⛏
オープンソースで誰でもシステムの情報を確認できる💻
ルールが明示されていて簡単に変更できない📜
プレマインがない💰
1つずつ説明します。
1.誰でも参加が可能なマイニング⛏
ビットコインが新たに発行されるタイミングは、Proof of Work(PoW)によってブロックが生成されたタイミングです。ブロックを生成したマイナーが、基本ブロック報酬という形で、決められた数量のBTCを獲得できます。
そして、新規発行のビットコインの獲得チャンスであるマイニングは、世界中の誰でも許可なしで参加が可能です。
法定通貨では、中央銀行、財務省などが新規発行に関わっており、一般人は勝手に発行することができません。一部の権力者が発行周りの権限を担っています。「誰でも一部の権力者になれる可能性はあるのでは?」と思うかもしれませんが、権力者は必ず一部の人しかなれませんし、一度権力を持った人が何度も権力を行使することができる点で不公平と考えられます。
マイニングはマシンを用意したらあなたでも今日からマイナーになれます。そして、許可も不要です。マイニングに限らず、ビットコインのフルノードやビットコインを保有することも許可は不要でオープンです。
2.オープンソースで誰でもシステムの情報を確認できる💻
ビットコインはオープンソースなので、貨幣システム全体が公開されています。誰かがズルしている仕組みになっていないかだとか、バグがないかなど、ビットコインの仕組みを誰でも検証することができます。
法定通貨の貨幣システムは基本的にクローズドになっているでしょう。公開するにしても、事後的に「今年は500円玉をX枚発行しました」であったり、「金融緩和を継続します」など大まかに知ることができる形かと思います。発行数量や金利の決まり方のようなものは、情勢によって決めるかと思いますので、事前に具体的なものを共有することはできません。結果的に、情報を獲得する機会は不公平となります。
ビットコインのオープンソースコードには、鍵生成から送金方法まで全ての仕組みを確認することができます。いつでも誰でもビットコインのソースを確認できる状態は、情報取得の機会が公平かと思います。
3.ルールが明示されていて簡単に変更できない📜
ビットコインはオープンソースでルールが明示されていながら、簡単にルールを変更できない点が公平だと思います。オープンであるため全員の監視下にあり、ノードに支持されなければ変更は成り立ちません。
また、貨幣システムにおいて重要な発行部分についてルールが最初から決まっています。
ブロック生成ごとにブロック生成者に基本ブロック報酬が配布される
基本ブロック報酬の数量は50BTCに始まり、21万ブロック生成ごとに半減する
ルールが明示されていることにより、どのようなリスクがあるかなどを自分自身で判断することができます。
貨幣システムにおける発行は、単位当たりの貨幣の購買力を希釈する行為です。つまり、発行は貨幣保有者にとってリスクになります。どれだけ発行されるかがわからなければ、リスクを適切に判断することができません。発行量(インフレ率)を決める人がいた場合は、その周辺の情報筋との情報格差になります。
4.プレマインがない💰
プレマインとは、マイニング公開前に開発者や周辺のステークホルダーに対して優先的にトークンを配布し、その後マイニングがパブリックに開かれる仕組みです。
ビットコインではプレマインは無く、最初期も今のPoW同様にSatoshi Nakamotoがマイニングしていたとのことです。Satoshi Nakamotoだけがマイニングしていてズルいと思うかもしれませんが、初期は価値もありませんし、マイニングした大部分を動かさずに姿を消しました。
Satoshiがズルできる仕組みであれば、ビットコインをリリースした初期にマイニングしていた人達は熱心に参加しなかったことでしょう。デジタル通貨は毎度失敗していましたし、暗号資産市場なども存在しませんでした。匿名のSatoshiはビットコインを信頼してもらえるように、オープン化、パーミッションレス(許可不要)、などの健全さや公平さにとことんこだわったんだと思います。
関連記事:なぜビットコインの再現性が低いのか?🧪#29
ビットコインの存在を知るタイミングには、言語障壁や年齢などで差はあるかもしれません。一方で英語かつインターネット上でやり取りされており、ビットコインの発行機会は昔も今も未来も平等に与えられています。
ビットコインの不公平なところ4選
ビットコインでよく指摘される不公平なところについて、4つピックアップしました。実際に不公平かは後ほど考えますが、一見不公平だと思えますね。
発行量が半減して2140年以降は発行されない⌛
ネットや国など環境によっては参加できない📡
保有者に偏りがある🤑
マイナーが大規模🏭
こちらも1つずつ説明します。
1.発行量が半減して2140年以降は発行されない⌛
ビットコインは約4年ごとに半減し、おおよそ2140年あたり以降にはビットコインが発行されなくなります。つまり、時間が経てば経つほど、ビットコインの入手難易度が上がる可能性があります。
例えば、2140年に生まれた人がいるとして、ビットコインは存在しているが発行が終わっているとします。その場合、ビットコインを最初に得る方法は下記かなと思います。
(存在していたら)法定通貨で買う
マイニングで手数料報酬を得る
ビットコイン保有者にサービスかモノを売る
ビットコインの発行は終わっているので、2140年には価格のボラティリティは小さくなっているかと思いますが、単位当たりの入手難易度は2023年の今より高いかもしれません。「未来の子供たちは入手難易度が上がって機会が不公平だ」と思うかもしれません。
いくらオープンソースでパーミッションレスでも、生まれてなければ参加できませんよね。とはいえ、2023年のビットコインは一部の国で法定通貨と認められつつも、まだまだ怪しい存在というのが世間の認識です。「ビットコインがうまくいくかわからない」というリスクを今のビットコイン保有者は抱えています。
そして、このリスクは開始した2009年に遡るほど高くなります。逆に2140年に進めば進むほどリスクが下がります。なぜなら、発行量減少によるインセンティブ設計の成立や、社会へのビットコインの普及状況を後世の人達は確認できるからです。
システムの構造的な欠陥は基本的に時間経過により顕在化します。2140年には、ビットコインが世界的な貨幣になっている可能性もありますし、誰にも使われないいわゆる電子ゴミになっている可能性もあります。電子ゴミになっていたら未来人も入手しやすいかもしれません。
過去と未来ではリスクが異なります。リスクが高い過去ほどビットコインが入手しやすく、リスクが低い未来ほど入手しにくいというのは、個人的に適切だと思います。過去にビットコインを獲得した人は普及に努めなければなりませんし、未来にビットコインを獲得する人は獲得すべきか判断する情報量が多いです。
2.ネットや国など環境によっては参加できない📡
ビットコインはネット環境がないと送金、フルノード、マイニングなどができません。ネットが一部の人しか使えなかったり、そもそもネットが無いような地域ではビットコインに参加することができません。
確かに、この点は既存の貨幣システムに劣るかと思います。法定通貨は物理的な紙幣やコインを手渡しできて、渡し手も受け手も特に準備は不要です。ビットコインでは渡し手はネット環境が必要ですし、受け手はウォレットをインストールするか秘密鍵と公開鍵のペアを準備しておくかする必要があります。
また、国の規制によってはビットコインの保有を禁止されたり、マイニングが禁止されたりすることもあります。
「全世界の人が参加できる」とはいっても、その人の環境によっては参加できないという機会の不公平があるとも考えられます。
一方で、ネットが無い地域では、もしかしたら内部で貨幣システムが完結している可能性もありますし、ビットコインを知らず、不要な可能性もあります。また、国で規制があれば他国への移住の可能性もありますし、何らかの方法でビットコインへアクセスできる可能性もあります。
3.保有者に偏りがある🤑
ウィンクルボス兄弟は約15万BTC、マイクロストラテジーは約14万BTCを保有していると言われています。ビットコインの最大発行枚数は2100万BTCなので、0.6~0.7%を保有していると考えられます。
上記のように、初期参入者やお金持ちがビットコインを大量に保有できて不公平だという意見があります。確かに不公平とも考えられますが、すべてのお金持ちが大量にビットコインを保有しているわけではありません。
初期の参入かつ、ビットコインを大量に買おうという意思決定がリスクを取っています。ビットコインに何らかのバグがあり価値が崩壊したら、大量にビットコインを保有している人は損失を被ってしまいます。そのため、保有者に偏りがあることについて、羨ましさはありつつも不公平だとは思いません。
また、大量にビットコインを保有しているからといって、ビットコインという貨幣システムにおける権力などは付きません。金利などもないですし、大量保有者の意思決定に従うルールなどもありません。ビットコインの大量保有者は、将来的にはビットコインを消費してサービスを享受するという形になります。
Lightning Networkのキャパシティにして手数料獲得などもあるかもしれませんが、チャネルの管理が必要なため、ただビットコインを大量に持っていても購買力を多く抱えているに過ぎません。
4.マイナーが大規模🏭
マイニング事業者が大規模なものが増えてきています。初期は一般的なPCやCPUなどでもマイニングでビットコインを獲得できましたが、今では個人のソロマイナーだとなかなか稼ぎにくくなっています。
一方で、個人のマイナーが全く稼げないわけではなく、例えばマイニングプールであったり、Nicehashなどにハッシュパワーを売って稼ぐみたいなこともできます。また、幸運なソロマイナーであれば、運よくブロック生成してブロック報酬を手に入れることができます。
関連記事:たった86THのソロマイナーが有効なブロックを発見(2022-1-24)
いくら大規模なマイニング事業をしようが、個人で参加しようが、ビットコインのProof of Workの確率はハッシュパワーに基づいて平等です。大規模マイナーも多大なコストを払っているので、リスクも大きいかと思います。
勘違いしている方もいるかと思いますが、大規模マイナーじゃないと参加できないというわけではないので、そこは知っておきましょう。
まとめ:何が公平・不公平かを考えよう
ビットコインの公平と不公平について考えました。おそらく、公平については主観であり、人それぞれで妥協できる範囲が異なると思います。
ビットコインや他の貨幣システム、ゴールド、証券などの資産などについて、どこが公平で不公平かを考えるのは大事かもしれません。そして、自分が公平だと思えるものを支持したらいいかと思います。
何が正解で、何が不正解かは時間が経たないとわかりません。長期的には多くの人が「比較的公平だ」と思えるものが貨幣システムとして選ばれるかと僕は思います。今は存在していなくても、将来的にどこかでビットコインよりも公平で画期的な貨幣システムが出てくる可能性もあります。
まずは、当たり前になりつつある法定通貨から公平・不公平について考えてみてはいかがでしょうか。
今週のビットコイン関連ニュース⚡
米国債務上限協定でビットコインマイニング税30%阻止:下院議員
米国下院議員ウォーレン・デイビッドソン氏によると、提案されているデジタルアセットマイニング・エネルギー税(DAME)は議題から外されたと伝えられている
アメリカはマイニング大国なので動向が気になります
テザー社、持続可能なビットコイン採掘を推進へ ウルグアイにリソースを投資
テザー社が南米のウルグアイでリソースを投資し、エネルギー生産と持続可能なマイニングを支援・推進予定のようです
以前ビットコインを買ったりと、テザー社は色々ビットコイン周りを固めてきているように思います
「ビットコインスタンダード」の著者がエルサルバドルの大統領にアドバイス中
「 The Bitcoin Standard」の著者、サイファディーン・アモウズ氏が、エルサルバドル国立ビットコイン局(ONBTC)の最新経済顧問に就任
アモウズ氏は地元紙に対し、「エルサルバドルが5~10年以内に債務から解放される可能性。イノベーションの中心地となる大きな潜在力」があると述べた
エルサルバドルはビットコインを最初に法定通貨の1つとした国であり、元々実験的なイメージを持っていました。エルサルバドルがビットコインによって経済的にうまくいったら、他の中小国が追随する可能性があります
ビットコインの採掘難易度は過去最高の51.23 Tとなっています
OrdinalsやBRC-20などにより手数料が高騰したのが影響しているかと思います
最近の手数料は落ち着いています
LNアプリを提供するUmbrelが「Umbrel Home」の発売
今までLNのノード構築はラズパイやPCなどでできましたが、Umbrel Homeという専用ハードウェアをUmbrelが発売しました
お値段は99,990円とのことで、ラズパイなどでやると3-4万円なので少々お高いです
初版なので高い可能性があり、今後大量生産されて安くなったり、レビューを見てから検討をしてもいいかもしれません
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