こんにちは、もやしししゃもです。
ビットコインは「非中央集権」で法定通貨は「中央集権」であると、比較されることが多いです。ところで、今は中央集権の法定通貨で成り立っているのに、非中央集権であることの良さがよくわからない方も多いかと思います。
今回は、貨幣システムにおいて非中央集権であることがなぜ重要かについて考えていきます。ほとんど、中央集権との比較で考えます。
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前提としてビットコインの何が非中央集権か
非中央集権について考えていく前に、ビットコインの何が非中央集権かについて改めて整理してみます。
ずばり、ビットコインにおけるノードやマイナーなどの、人が関わっているところについて不特定多数の人物が参加できるため非中央集権と言われています。いわゆる、システムにおける運営者が非中央集権となります。
一方で、法定通貨はというと政府や国家のトップ層の人が、社会状況を見ながら金利をいじって通貨の流通などを管理したり、新紙幣発行など色々な意思決定をしています。特定人物しか関われない点で中央集権と考えられます。僕は日本円の金利に一切口出しできませんが、日銀総裁の一声(実際には裏に何人もいるかと思うが)で金融政策が可能です。
つまり、貨幣システムについて、運営者に権限が集まっているかどうかが中央集権か非中央集権かの違いになります。
貨幣システムが非中央集権であることが重要な理由3つ
本題になります。貨幣システムが敢えて非中央集権であることが重要な理由について3つ挙げます。
貨幣の本質は信頼🤝
中央集権の信頼肥大によるリスク🎈🔥
貨幣は大人数が使えた方がいい🫠
それぞれ説明します。
1.貨幣の本質は信頼🤝
貨幣は元々腐りにくい交換の媒体として生まれ、今日まで姿形を変えながら普及してきました。農産物、貝殻、米、金貨、紙幣など様々です。そして、貨幣が姿形を変えられた理由は、姿形が貨幣の本質ではなく、貨幣の本質がそこに内在する信頼だからです。
何かを交換する際に、貨幣について2者が信頼していたら交換が成立します。そして、交換相手について、人種や言語、出身などは基本的に問いません。大昔は仲良かったからとか、出身地が一緒だからという理由で交換していましたが、相手が誰であっても貨幣が信頼を肩代わりしてくれます。貨幣について、さらに詳しく知りたい方は下記記事を参考にしてください。
関連記事:「貨幣の哲学」から学ぶビットコインの貨幣性💵#34
とにかく、貨幣の本質は信頼であると捉えることができます。そこで、法定通貨(中央集権)とビットコイン(非中央集権)について、信頼がどこにあるかを考えてみます。
例えば、米ドルの信頼は国家や米連邦準備理事会(FRB)、連邦公開市場委員会 (FOMC)などに信頼が集まっていると考えられます。FOMCでは投票によって利上げなどの決定ができるそうですが、その投票に参加できるのはある程度限られた人となります。また、偽札も法律で禁止しているので、普段から偽札か気にして紙幣を扱っている人はほとんどいないでしょう。そのため、国の法律や警察も信頼していたりします。
米ドルの場合、ある程度システマティックにできているかと思いますが、米ドルシステムの運営において誰か特定人物の意思決定がよく入ってきます。そのため、特定人物の意思決定に信頼が集まり、造幣局であったり紙幣に施された偽札対策などの貨幣自体を強く信頼している人は少ないんじゃないかなと思います。賢い人達が集まれば、うまくコントロールしてくれるだろうという形です。FOMCでの投票の仕組みとか、正直どうでもいいでしょう。
ビットコインにおいて意思決定が入るすき間はノードであり、ノードは不特定多数の人が入ることができる上に、発行ペースや送金の仕組みなどプロトコルの大部分は決まっておりノードの意思を反映できるところは少ないです。そのため、ビットコインは特定人物ではなく、プロトコル自体に信頼を集中させているように思います。不特定多数の人々を信頼することができる人は稀だと思います。不特定多数の人々がいる仕組みを信頼しているのだと思います。
僕の個人的な考えですが、中央集権と非中央集権の信頼の矛先は下記のようになるかと思います。中央集権的な法定通貨は国家や中央銀行に信頼が集まり、ビットコインは貨幣システムに信頼が集まります。
例えば、米ドルがハイパーインフレを起こしたらFRB、FOMC、米国政治家に対して怒りの矛先が向けられるでしょう。一方でビットコインが大量発行されたり、不正送金が実現したら、ノードではなく攻撃者やビットコインのシステムを調査することでしょう。
つまり、中央集権的な法定通貨の貨幣システム自体は信頼ではなく、あくまで国家や中央銀行に対する信頼の参照先であると考えられます。一方で、非中央集権的なビットコインの貨幣システムについては、数学や暗号、不特定多数のノードなどによって支えられ、貨幣システム自体が信頼であると考えられます。貨幣の本質は信頼である点で、法定通貨に比べてビットコインの方が信頼との距離感が近いように思います。
2.中央集権の信頼肥大によるリスク🎈🔥
世界的に見てほとんどが中央集権的なプロジェクトかと思います。それは、中央集権的なプロジェクトは始めやすいし、意思決定もスムーズだし、融通が利いて便利だからかと思います。
例えば、下記のような2つの貨幣システムがあった時、どちらが信じられますか?
大統領令によりスタートした国家の選りすぐりメンバー10名のみで管理される貨幣システムです。
非中央集権的な貨幣プロジェクトを始めました。参加者は現在10名いて今後は不特定多数の人が参加できる貨幣システムです。
規模の違いもあるかと思いますが、前者の方が余計な人もおらず信頼できそうです。後者は怖いですね、不特定多数の人って誰だよという。。
上記で伝えたかったのは、非中央集権的なプロジェクトの最初は信頼性が低く難航します。中央集権的なプロジェクトの最初はスムーズで実際うまくいきやすいです。
そして、多くの人から信頼を得て順調に成長した中央集権貨幣システムは、次第に不健全化していきます。例えば、少人数を相手に通貨発行益を得る場合は儲けも少なくバレやすいですが、大人数を相手に通貨発行益を得る場合は少額の搾取でも儲けが多くバレにくいです。また、この通貨発行益に対して群がる利権団体も出てきます。
貨幣システムに信頼が集まれば集まるほど、エリート10人組は誘惑だらけになります。これまで育てた信頼を一部棄損して大金持ちになるか、まだまだ信頼を育て続けるか。家畜の食べ頃を伺っている感覚です。そして、この誘惑はエリート10名が代替わりしても続きます。
中央集権プロジェクトは、序盤は比較的うまくいきガンガン成長していきますが、大きくなりすぎると利権が絡んだり、コントロール自体が大変になったりと、大きくなった体を支えるのに精一杯となります。例えとして風船🎈に近いです。風船を膨らませるのはできますが、膨らませすぎると破裂するし、大きくなると何かにぶつかって割れるリスクが上がります。かといって何もしないと小さくなり利権団体に怒られるので、いい感じに管理し続ける必要があります。
「非中央集権に移行したらいいじゃない」と思うかもしれませんが、今までエリート10名でやってきた実績と、利権を考えればほぼ不可能に近いです。10名のうち1名が非中央集権にしようと動いたら、残りの9名が排斥するかもしれません。中央集権から非中央集権への移行は難易度が高いです。
一方、非中央集権プロジェクトは、信頼性が最も低い序盤さえ切り抜けることができれば、設計次第とはなりますがネットワーク効果によって誰にも制御不能な存在になることができます。非中央集権的な貨幣システムに信頼が集まれば集まるほど参加者が増え、参加者が増えれば増えるほど貨幣システムが健全になります。健全になるとより信頼が集まります。信頼の正のサイクルです。
例えとして火🔥に近いです。マッチなどが無いとして、火を起こすには木と木をこすり合わせた摩擦熱で火種を作り、木くずに酸素を送り消えないようにしながら小枝や薪に火を移していきます。序盤は湿ってたら着火も難しいですし、火も下手するとすぐに消えます。しかし、うまく着いた火は燃料が尽きなければ中々消えません。運が悪ければ、周りに火の粉が飛び散って山火事にも発展し得ます。消防隊が出動しても、止めることができず燃料ある限り勝手に広がり続けます。火を起こした人はびっくりして傍観しているだけです。
中央集権:導入期スムーズ、成熟期リスク高
非中央集権:導入期リスク高、成熟期リスク低
3.貨幣は大人数が使えた方がいい🫠
貨幣は、交換相手の人種、言語、出身地など誰であるかを気にしなくて済むように、信頼を肩代わりしてくれます。そして、その貨幣の交換相手が増えれば増えるほど、貨幣の存在意義が高まります。
例えば日本では日本円が基軸通貨です。しかし、米ドルは基軸通貨ではありませんし、米ドルが使える店はほとんどないでしょう。世界を代表する米ドルを日本で基軸通貨にしない理由はいくつかあるかと思います。日本には通貨発行権があり、日本円を発行・管理することができ自国通貨を信頼しやすいです。米ドルの権限はアメリカ人が握っているので、それを基軸通貨にすると搾取される可能性があります。
つまり、中央集権的な法定通貨は、その中央集権の対象を信頼しているまたは信頼を強制される立場やエリアでないと、使用する理由がありません。例えば、米ドルを日本で基軸通貨にして、アメリカが米ドルを刷りまくってアメリカ国民に補助金を出しまくっても、日本には一銭も補助金がなくむしろ日本の財産が大量に買われます。もちろん日本円と米ドルなどは為替市場でバランスを取っていますが、法定通貨は各国の地域通貨に過ぎません。
直近では、中国が人民元の国際決済を増やそうと頑張っています。これは人民元の基軸通貨エリアを増やして、長期的に支配したり搾取対象にすることを考えているのかもしれません。
とにかく、貨幣は使うエリアや人が増えれば増えるほど、貨幣に対する信頼がどんどん集まっていきます。しかし、一部の国の特定の誰かが権利を握っている中央集権貨幣を、全世界で足並み揃えて利用するでしょうか。うちは他の通貨やゴールドを使うなど、反対する国も出てくるでしょう。戦争や資源面での経済的な脅しで強制的に実施されることはあるかもしれませんが、貨幣の信頼を損なう可能性があります。
そこで、ビットコインという中立で公平な非中央集権貨幣システムの登場です。ビットコインはネットさえあれば誰でも使用、参加できることを前提に設計されています。さらに、不特定多数の人が運営者であり、利権もありません。コードもオープンソースで透明性が高く、プロトコルも厳重に設計されています。ビットコインは法定通貨の基軸通貨戦争で敗れた人たちが集まる最後のオアシスなのかもしれません。
これまで、人類の歴史で何度も基軸通貨は入れ替わってきました。これは、中央集権的な貨幣システムであることに課題があるのではないかと思います。やはり中立ではないため、全世界の人が信頼するというのは難しいですし、運営母体の国が永久に覇権国家で居続けることは難しいのだと思います。
CBDCだと全世界で流通できると思う人もいるかもしれません。しかし、CBDCは中央銀行が発行するデジタル通貨なので中央集権的な貨幣システムの延長線です。一時的にうまくいくかもしれませんが、これまでの法定通貨と同様の課題に直面するかと思います。
個人の妄想ですが、非中央集権的なビットコインは、これまでの基軸通貨戦争から脱出できる重要な存在なのではないかと思います。ビットコイン基軸の世界もあり得ますし、各国法定通貨との中間通貨になる可能性もあります。まずは、銀行インフラが整っていない国から普及し始めるのではないでしょうか。
まとめ:非中央集権と貨幣システムの相性は良い
貨幣システムが非中央集権であることが重要な理由を解説しました。
貨幣の本質は信頼🤝
中央集権の信頼肥大によるリスク🎈🔥
貨幣は大人数が使えた方がいい🫠
中央集権ディスになりましたが、中央集権にした方がいいフェーズや場面があります。例えば、LNのカストディアルウォレットのおかげでLN利用が手軽になったと思いますし、企業も非中央集権になったら誰が意思決定するの?と衆愚政治みたいに失敗するところも出てくるでしょう。序盤から非中央集権を想定した運用は至難の業です。
ただ、中立で公平であることを求めると非中央集権であることが重要となります。貨幣システムという根底となるインフラが中立でなければ、その上にできたプロダクトも不安定になるかと思います。インターネットにどこかの国の意思が入ってたら利用者は減ることでしょう。
非中央集権と相性がいいものを考えましたが、頭の固い僕は貨幣以外に思い浮かびません。ID、通信、言語、市場?とりあえず多くの人に使われるべきものを挙げてみました。
とにかく、貨幣システムを非中央集権運営にした方が良さそうと思ったSatoshi Nakamotoはすごいと思いますし、実装して普及させた点含めると奇跡のようです。
最後に、Satoshiのコメントを1つ残します。
The root problem with conventional currency is all the trust that's required to make it work. The central bank must be trusted not to debase the currency, but the history of fiat currencies is full of breaches of that trust.
従来の通貨の根本的な問題は、それを機能させるために必要なすべての信頼です。 中央銀行は通貨の価値を下げないように信頼されなければなりませんが、法定通貨の歴史はその信頼の裏切りに満ちています。
— Satoshi Nakamoto
今週のビットコイン関連ニュース⚡
AMBOSS がライトニング ネットワーク製品と AI リサーチのシード資金で 400 万ドルを調達
AmbossはStillmark、Valor Equity Partners、Draper Associates、Fulgur Ventures、Ride Wave VenturesなどのVCから400万ドルを調達
AmbossはLightning Networkのエクスプローラーを提供しています
この資金はAI研究とプロダクト開発に使用されるようです
AIによってノードとチャネル管理の自動化など考えているみたいで、結構おもしろそうですね
Lightning Network関連企業に資金流入があるのはとても良い流れです
Satoshi時代のビットコイン クジラが 12 年間眠っていた後、1100 万ドルを移動
12年ぶりにアドレスから400BTCが送金されたみたいです
最近、10年ぶりのものや、11年ぶりのアドレスなど古いアドレスが動き始めています
何かの準備とか前触れかもしれません
CBDCは「ビットコインのすべての価値を破壊する」ように設計されている:米国上院議員Ted Cruz
米国上院議員Ted Cruz氏はビットコインを称賛しつつも、CBDCに懸念を抱いているようです
CBDCの禁止提案をするほどです
そんなにCBDCがビットコインに対して懸念か?とは思いますが、表舞台の声の大きい人がCBDCに疑問を呈することでCBDCへの議論を引き起こせるかもしれません
ビットコインは4年に一度半減期があり、次の半減期まで1年を切りました
現在のブロック報酬は6.25BTCであり、2024年4-5月あたりからブロック報酬は3.125BTCになります
まだまだブロック報酬はtx feeの50-60倍ほどあるので、次を入れてあと6回くらい半減期(約21年)が来ればtx feeがブロック報酬を超える転換期になりそうです
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