こんにちは、もやしししゃもです。
最近、銀行系が破綻だったり怪しい雰囲気になっていますね。資産におけるリスクは、顕在化した時点で終了してしまうので、事前に対策が必要となります。この状況の中で、「Not your keys, not your coins」の深みが改めて伝わってきます。
今回は「Not your keys, not your coins」の重要性と、資産の所有や資産の中身なども考えていこうと思います。私たちにできることは、事前の対策くらいしかありません。来る日に向けてこの記事を読んでいただければと思います。
Not Your Keys, Not Your Coins.
あなたの鍵でなければ、あなたのコインではない
— Andreas M. Antonopoulos
↓LNでのチップはこちら(1satoshiに感謝⚡)
moyashamo@getalby.com
過去の収奪の歴史を振り返る💎
自分の資産を守る「Not your keys, not your coins」の前に、私たちがどのように資産を奪われてきたかを復習しましょう。
暗号資産関連の収奪の事例🏦
暗号資産関連において、資産の流出や引き出せなくなるイベントは多くあります。いくつか有名な事例をリスト化します。
取引所関連
マウントゴックス事件(2014年):ビットコインの「トランザクション展性」の脆弱性を突いた攻撃により、約13万人の顧客が被害を受け当時の時価で約470億円相当のビットコインが流出した。未返済。
CoincheckのNEM流出(2018年):ホットウォレットへの不正アクセスにより当時時点で約580億円相当のNEMが流出した。補償によりJPYでの支払い。
FTX事件(2022年):取り付け騒ぎによる資金のショート、裏では顧客資産の不正流用。
その他も取引所関連での被害はいくつかあります
その他暗号資産関連
The DAO事件(2016年):Ethereum上の分散型投資ファンドである「The DAO」でハッキングを受け364万ETHが流出。流出した世界線をEthereum Classic、新版の流出しなかった世界線を今のEthereumとハードフォークすることで解決。
レンディング事業者の破綻:レンディング事業者であるCelsius、BlockFiなどでは資金の引き出しができなくなった。
各種DeFiやブリッジなどのハッキング
トークン設計による価値崩壊:テラ(Terra/LUNA)、TITANなど
「秘密鍵を知っている者だけが資産を動かせる」という暗号資産の特徴があるにも関わらず、収奪は発生します。中央集権的な組織への資金の集中、分散型プロジェクトであっても何らかの脆弱性を突かれて資金が流出してしまう可能性があります。
リターンや利便性を得るために、自分以外の誰かまたはどこかに資金を置くことは個人の自由かと思います。ただし、突然奪われた際の損失をその「リターンや利便性」でカバーできるかは考えてもいいかもしれません。
その他の歴史的な収奪の事例🎭
下記は歴史的な収奪の事例です。基本的に国や企業レベルの収奪イベントであり、個人の力では基本的にどうすることもできません。
金貨の価値希釈💰
ゴールドは希少性が高く、偽造が難しく、加工がしやすい点から古くから古代ローマや中国など世界各地で貨幣として使われた。
より多くの金貨を発行して流通を促進するため、貨幣1枚に含まれるゴールドの量をどうにか減らした過去がある。
希少性が高いゴールドを貨幣として使っていたつもりが、いつしか国や発行体を信じるように変化した。
アフリカのガラスビーズ📿
アフリカではガラスビーズが通貨や富の象徴として利用された歴史があった。
アフリカではガラス製造が一般的ではなかったものの、ヨーロッパの職人が大量にガラスを製造することで、ガラスビーズを通貨として利用していたエリアの資産と交換することができた。
「ビットコインスタンダード」でも取り上げられている。
植民地化による収奪🌎
大国が自国の利益のために、土地や資源を収奪する目的で領土にした地域を植民地と呼ぶ。
戦争の敗北や、首領同士の交渉によって植民地になるため、たった一人の民で防ぐことは難しい。
アメリカのゴールド保有禁止令💰
1933年アメリカのルーズベルト大統領は、国民がゴールドの保有を禁止する大統領令6102号に署名。
アメリカ人は「保有している金貨、金地金、金証券をわずかな量を除いてすべて」ドルと引き換えに強制的に没収され、違反者は罰則が与えられた。
ニクソンショック💸
1971年にアメリカのニクソン大統領が米ドル紙幣と金との兌換一時停止を宣言
それ以降、ドルや法定通貨の裏付けは「金」から「国」に変わる
銀行による突然の預金封鎖🏦
シルバーゲート銀行、シリコンバレー銀行、シグネチャー銀行、クレディスイス周りが2023年に話題になった。
経済危機の中にあるレバノンでも、預金の引き出しが制限されている。
収奪イベントを避けるためには、事前に対策する他ありません。「Not your keys, not your coins」は来る収奪イベントに備えましょうという警告となります。
そして、当事者や中心人物以外は収奪イベントに気付いた後に対策することはできません。気付いた時には収奪はほぼ完了しており、「返されるか否か」「どのように返されるか」は権力者が握っています。
また、「金貨の価値希釈💰」「アフリカのガラスビーズ📿」「ニクソンショック💸」のように、資産を直接奪われなくても、資産の中身が抜かれているパターンも注意が必要です。これは「Not your keys, not your coins」だけでは守ることはできず、その資産自体を理解する必要があります。
真に所有することの難しさ😥
いくつも収奪イベントについて書きました。奪われる前には、自分で所有することが必要です。法律的な「所有」はあるかもしれませんが、もっと原理的な所有について考えてみましょう。
そもそも、人は何も持たずして生まれ、何も持たずして死にます。強いて言えば、生まれてくるときに身体は持っているのかもしれません。僕が考えるに、所有というものは生きている間でしか実感できない幻想のようなものだと思います。
あなたが持っているスマホ、メガネ、シャーペン、財布は本当にあなたの所有物でしょうか?法律的には所有していると言えるかもしれません。しかし、いきなり野生の動物にあなたのメガネが奪われたら取り返せるでしょうか?野生動物に法律は通じないので、メガネを巡ってバトルするしかありません。
上記はいきすぎた例かもしれません。所有というものは所詮法律で定められているものであり、法律なき自然界では所有を維持するためには力や知恵で守るしかありません。動物たちも食料や縄張り、卵や子孫を守るのに必死です。穴を掘ったり、カモフラージュしたり、毒で戦ったり、様々な工夫があります。
「アメリカのゴールド保有禁止令💰」も良い例です。ゴールドについて、ある日突然所有のルールが法律レベルで変わりました。法律も誰かが考えて作ったものです。植民地になれば、法律は別の搾取者に書き換えられます。権力やパワーの前では、「所有」は曖昧もしくは機能しないものとなってしまいます。
所有におけるビットコインのユニークさ💡
ビットコインにおける所有は個人的にユニークだと思います。ビットコインには触れるなど物理的な実体がなく、デジタル上で「所有的」なことができます。「所有的」と表現したのは、法律的に所有と言いづらい点と、ビットコインと人との関係性が曖昧だからです。
ビットコインを所有することは、一般的に秘密鍵を知っているということを意味します。秘密鍵を知っていれば、そのビットコインを送金することができます。つまり、「ビットコインを送金する力」がビットコインの所有となります。
一方で、秘密鍵の情報が漏れて複数人が秘密鍵の内容を知っていたら、誰がビットコインを所有しているでしょうか。この場合、送金するまではみんなが所有者であり、最初に秘密鍵を使ってビットコインを送金した人が「所有していた人」となります
過去に「シードフレーズなぞなぞ」という謎を解いたらビットコインの秘密鍵がわかって送金できるというイベントをしましたが、僕は答えを知っているので一時期所有者でした。しかし、誰かが解いてどこかに送金されてしまい、僕は所有者ではなくなってしまいました。
関連記事:シードフレーズなぞなぞの全ヒントとBIP39について📖#39
ビットコインは自然界における「所有」に近いかと思います。「力」で争うことは諦め暗号学という「知恵」で所有を守ることにしました。物理的に触らずに、脳で所有できる珍しい存在です。
また、ビットコインは人格に紐づいていません。秘密鍵を知っているか、知っていないかの証明はできないからです。「秘密鍵は知りません」とは言っても、本当に秘密鍵を無くした可能性もあるし、実は秘密鍵をどこかに隠したり、暗記している可能性もあります。人間の脳がハードディスクのような単純なデータベースでなくて良かったと思います。
ビットコインと人が紐づいていないことは、「所有」というものは曖昧なものであることを教えてくれます。それと同時に、真に所有することの難しさと、法律を超越した所有の重要性を教えてくれます。
所有物の中身も理解が必要💸
「金貨の価値希釈💰」「アフリカのガラスビーズ📿」「ニクソンショック💸」の例に関係しますが、Not your keys, not your coinsの教えに従い大切に資産を守ったとしても、資産自体から中身を抜かれている可能性もあります。
所有物はもちろん、資産について自分が何の資産を持っているか把握することが重要です。今時、多くの資産はデジタル化されています。株式、ゴールドETF、不動産投資信託(REIT)、暗号資産、銀行残高など色々とあります。
僕が思うに、ビットコインはデジタル上で表現されたピュアな資産だと思います。ピュアというのは、ビットコインそのものということです。シンプルに表すと「Bitcoin is Bitcoin」です。「現物」とも表現されるかと思います。
一方で、株式、ゴールドETF、不動産投資信託(REIT)、銀行残高などのデジタル上の数値はどうでしょうか。これらに関する証券口座での数値は、「参照先がある」かつ「法律で所有を定義された」資産です。
資産における参照先の有無の重要性🔗
「法律で所有を定義された」については、実際には証券会社や管理会社などが管理しています。「参照先の有無」についてはゴールドETFなどで、どこかのゴールドが実は一部異なる金属を含んでいることが発覚したら価値が下がってしまいます。ゴールドを現物で家に置くことは、参照先がほぼないと考えることができます。
関連記事:世界のお金と市場を見てビットコインと比較(2022年版)💰#44
参照先の有無でいうと、暗号資産のステーブルコインなども注意が必要となります。直近、シリコンバレー銀行の破綻により、USDCの裏付け資産の一部が引き出せないとなりUSDCの価値が下落しました。つまり、USDCの参照先は、Circle社の預け入れ先の銀行リストとなります。つまり、3つ程度の信頼が必要になります。「ドル自体の信頼」「預け先銀行の信頼」「発行体Circleの信頼」。信頼の数が多いほど、どこかで穴が開く確率が高まります。
「参照」はインターネットにおけるリンク先に似ています。例えば、リンク先のWebサイトが閉鎖したら、そのリンクは意味を成しません。Webサイトが別ドメインへ移行し、不親切にリダイレクトなども行われなければ、リンクを修正する必要があります。資産の参照が増えれば増えるほど、資産における信頼の数が増えます。根元を抑えていなければ、有事には神に祈るか怒ることくらいしかできません。
トークンエコノミクスの重要性🌱
暗号資産にもいろいろなトークンがあるかと思います。ビットコイン同様、他トークンも秘密鍵によって所有を確保できるかもしれません。
一方で、暗号資産の場合には「参照の有無」以外に「トークンエコノミクス」について理解する必要があります。「参照の有無」はステーブルコインに通じますが、裏付け資産がどうなっているかを理解することです。例えばLPトークンなどは現物ではなく参照先があるとわかるかと思います。
「トークンエコノミクス」は参照先が見えない現物のトークンであっても考える必要があります。下記が全てではないですが、色々と考慮事項があります。
そのトークンはどのように発行しているか
どのように流通しているか
利回りは誰が負担しているか
経済圏で誰が得しているか
経済圏で誰が負担しているか
負担する人が負担する理由は適切か
得する人のインセンティブ構造は適切か
誰がそのトークンを必要とするか
トークンエコノミクスが適切でなければ、利益を得る前に壊れてしまう可能性があります。「テラ(Terra/LUNA)」「TITAN」あたりがわかりやすい例でしょうか。また、構造的な欠陥があっても長続きして、いつか破滅に向かうものもあります。
ビットコインのブロック報酬周りも、将来tx手数料メインで支えられるかは未来にならないと実態はわかりません。今は予測しかできないですし、トークンエコノミクスについてはビットコインも他人事ではありません。
トークンエコノミクスはかなり奥が深くかなり難しいです。僕自身、ビットコイン以外のトークンも触ってきた過去があるため、トークンエコノミクスが重要であることを理解しています。
関連記事:僕がビットコインを好きになるまで😎#26おまけ
専門家とかではないですが、いつかトークンエコノミクスの記事を書いてもいいかもしれませんね。トークンエコノミクスは自然から学べるものが多いです。🌱
まとめ:「Not your keys, not your coins」ある日突然来る終わりに向けて🔑
「Not your keys, not your coins」の重要性に加えて、所有や参照先、トークンエコノミクスなど色々と複雑に思えたかもしれません。「Not your keys, not your coins」を広義にすると、すべてこれで収まります。というのも、参照先もトークンエコノミクスも資産の「keys(鍵)」を握っていると考えられます。
暗号資産界隈の中でも、2023年のFTX事件やレンディング事業者の破綻など色々と「Not your keys, not your coins」を学ぶ重要な機会があったかと思います。勉強代になった方もいるかもしれませんが、同じ過ちを犯してしまえばもったいないです。
たった一人、自分だけが所有できる(鍵を握れる)というデジタル上の体験は珍しいかと思います。まずは、すぐ使わない分だけでも「Your keys, your coins」を試してみてもいいかもしれません。長生きすることは、市場で利を得る上で大事だと思います。緊急時に自分を守れるのは自分だけです。緊急時の他人は奪う側の人間となります。
関連記事:FTX騒動から学ぶトラストレスの重要性🧐#27
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今週のビットコイン関連ニュース⚡
「Badass」: Greenpeaceの新しい「Skull of Satoshi」アートワークはビットコインファンに人気
Ripple共同創設者のChris Larsen氏がビットコインの環境破壊のPoWをPoSにしようというプロパガンダを実施したいという考えの元、Greenpeace USAという環境保護団体がカナダの芸術活動家Von Wong氏に作品の依頼を行いました。
皮肉なことに、目を赤く輝かせた「Skull of Satoshi」という作品はビットコイナー達に気に入られミーム的にアイコンにする人も出てきました。
また、ビットコインの環境問題を訴える作品を依頼され作成したカナダの芸術活動家Von Wong氏は、有識者からビットコインを学び、ラビットホールに落ちそう、もしくはもう落ち始めているように見えます。
ビットコインについて批判的に考えることは、ビットコインを深く理解するきっかけを生みます。文脈性が面白いのでSkull of Satoshiはビットコインの歴史に残るミームになりそうです。
#Bitcoin の環境問題を訴える作品を作った結果、オレンジピルを飲みラビットホールに落ちてしまった1人のアーティストの物語。💀🏭️ 理解力のあるアンチビットコインは、ビットコイナーへのきっかけになります。思考の変化までがアートかな。🐇🕳️ #SkullofSatoshiThurs evening, I was sad. I had just spent 6 months pouring my heart and soul into building an amazing installation to inspire real change for something few seemed to care about. Then, Bitcoin Twitter noticed the #SkullOfSatoshi, and the rollercoaster began. Here’s my story /1 https://t.co/mhwrV8Zq4BVon Wong @thevonwong
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対応すごく早いですね、ビットコイン周りの技術者も確保しているのかなと思いました
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