こんにちは、もやしししゃもです。
今回は珍しく実用性寄りなビットコイン記事です。「Dune Analytics」というユーザーがSQLを用いてオンチェーン情報を分析できるアプリケーションがあり、先日の2023年1月14日にビットコインのデータも扱えるようになりました。
EthereumなどのEVM系メインな感じだったので、データ構造の違いからビットコインの扱いはだいぶ先かもなーと思っていました。「Duneでビットコイン関連の分析してみたいな」と年始になんとなく思っていたので、タイミング良くて驚きでした。
本記事では、「Duneで具体的にどんなオンチェーン分析ができそうかの事例」と「1つ個人的なリサーチ」をしてみようかと思います。
非エンジニアであればSQLなどに抵抗があるかもしれませんが、Duneでは他人のコードを参考にできるので取り組みやすい部類なのではないかと思います。(僕自身SQL初心者&非エンジニアです)
Duneでオンチェーン分析ができると、ビットコイン自体のデータ構造やUTXOなどの理解も深まりますし、SQLの勉強にもなり、データを通じた調査なども捗ることでしょう。エンジニアに限らず誰でも楽しめるかと思いますので、ぜひ閲覧いただければと思います。
↓LNでのチップはこちら(satoshiに感謝⚡)
moyashamo@zbd.gg
Duneでできるビットコイン分析事例👍
Duneでできるビットコインのオンチェーン分析事例をいくつかピックアップします。このDuneの記事を作成するにあたって、下記2つのリンクがかなり参考になりました。
ビットコイン関連指標まとめ(Dune):ビットコインについてDuneでできそうなことが一通り載っています。本記事はほぼこちらのSQLクエリを参照
SQLでビットコイン分析する方法(Substack):上記指標制作者の記事で、SQLクエリの説明が書いています
上記クエリを参考に、個人的にクエリを作ったりしてみました。作るにあたって、SQLのコードを初見で見てもわからなかったので、動画を見るとなんとなく理解できるようになりましたので参考まで。
moyashamo作ダッシュボード(Dune):ほぼコピペコードですが、参考になればと思います
SQL入門講座(YouTube):日本語で一通りSQLの基礎が学べてコードの意味がなんとなくわかるようになります
まずはカンタンなところから。ブロックごとに発行されるビットコイン枚数をグラフ化することができます。しっかり50→25→12.5→6.25と半減していっているのがわかります。今は3回目の半減後で、次回(2024年3月頃)は4回目の半減期となります。
みなさんが気にするビットコインの総供給量も表示できます。別データとして価格などもあり、同じグラフに一緒に表示させたりもできます。他チェーンとの比較などもできたりしそうですね。価格はなんとなく対数(log)データにしてみました。
ちょっと変わりものでいくと、SegWitトランザクションの割合なども表示させることができます。約5年かけて今では約75%がSegWitトランザクションとなっているようです。
マイナーの報酬も見れたりします。マイナーの報酬はブロックごとに新規発行されるビットコインとトランザクション手数料の合計なので、合わせて表示します。現状、トランザクション手数料の影響はまだまだかなり小さいです。ビットコインの報酬数量は減っていますが、ドル価格を掛けてあげるとマイニング事業に関する法定通貨建て売上も表示できそうです。
難易度やハッシュレートのデータもあるので、そちらを組み合わせるとハッシュレートあたりの期待値も出せそうです。
マイニング報酬に占めるトランザクション手数料の割合も表示できます。手数料高騰時は報酬に与える影響が大きくなっていることがわかります。
直近のトランザクション手数料の割合は1~2%程度でしたので、同じ手数料とトランザクション数が維持されるなら6回の半減期後、つまり21年後(次回半減期は約1年後)の2044年あたりにはトランザクション手数料とブロック報酬の割合が同じ程度になることが予想されます。
2044年になったら、今の界隈の人達も中年のおじさんorお年寄りですね👴。ビットコインはまだ14歳なので、21年後どんな世界になっているのか想像もつきません。どうなっていようが楽しみですね。
ブロックタイムと難易度のグラフも表示できます。難易度は上がり続けているので当然ですが、ブロックタイムは10分を下回っていることが多いです。
逆に、ブロックタイムが増加した時期などを調査してみるとビットコインの歴史を知ることができます。直近でいうと、2021年6月あたりに10分をオーバーしており、その後難易度が急激に下落しています。2021年6月には中国でマイニング規制があり、データに反映されていることがわかります。
Duneでは他にも下記のようなデータを調べることができます。
意外と色々データがあるなと思いました。アドレスタイプなど、しっかり理解できていないものもあったりして、学ぶきっかけにもなりそうです。
個人的ビットコインオンチェーン分析🧐
Dune初心者ながら、ビットコインのオンチェーン分析してみようと思います!ただ、いきなり指標を作るとかは大変そうなので、上で挙げてきた事例から気になる点を深堀り調査してみます。
個人的に気になったのは、マイナー報酬のグラフの丸で囲っている2010年7月あたりの部分です。「バグか!?」と思うくらい飛び跳ねています。しかもオレンジ色なので、ビットコインが発行されまくっています。
データが本当であれば、過去に不正な大量発行などされているかもしれません。他のグラフも見てみましょう。
ブロックタイムのグラフです。やっぱり、2010年7月あたり一瞬だけブロックタイムが短いです。細すぎるので、もうちょっと拡大して見てみましょう。
2010年6月から2010年9月に期間を絞って、日あたりのブロックタイム平均を表示してみました。2010年7月12日から17日あたりでブロックタイムが5分を下回っています。その後難易度も上がっていますし、データとしては間違っていなさそうですね。
ビットコインの難易度調整は2016ブロック(約14日)ごとに実施されますので、上記時期のブロック高を調べてみましょう。
ブロック高64,512(2016×32):2010-07-06 10:57
ブロック高66,528(2016×33):2010-07-13 17:03(前回から7日後)
ブロック高68,544(2016×34):2010-07-17 01:29(前回から4日後)
ブロック高70,560(2016×35):2010-07-27 11:42(前回から10日後)
2010年7月あたりの難易度調整時期を調べてみました。Duneの表と比べても間違いなさそうです。
特に注目すべきは、2010-7-13から2010-7-17の間です。難易度調整はブロックタイムが10分であれば約14日ごとに発生しますが、たった4日で2016ブロックが完了しているのです。何かあるに違いない!!!2010年7月の歴史を調べてみましょう。
ビットコイン激動の2010年7月❤️🔥
Bitcoin wikiにて、2010年7月の歴史が記載されていました。
7月7日 – ビットコインv0.3がリリース。
7月11日 – 最新リリースのニュースがSlashdotに伝わり、ビットコインユーザーが大量に流入。
7月12日 – ビットコインの価値が急速に上昇し始め、たった5 日間で$0.008から$0.08(10倍)に上昇。
7月17日 – マウントゴックスが設立。
7月18日 – ArtForzは最も初期のGPUマイナーの1つになります。
2010年7月、激動すぎる。。w
マウントゴックスもタイミングすごすぎますね。GPUマイナーも乗り込んで来ています。
どうやら、2010年7月11日の「Slashdot」がブロック大量発行の原因になっていそうですね。Bitcoin日本語情報サイトにてSlashdotに関する記載がありました。
コンピュータ系ニュースを中心に取り扱う電子掲示板であるSlashdotにビットコインが取り上げられました。これにより、多くの人々にビットコインが知られるようになります。
どうやら、Slashdotはコンピューター界隈の掲示板のようです。そして、Slashdotには下記のような内容が記載されています。
"破壊的テクノロジー"とは、こういうことだろうか。ビットコインは、ピアツーピア、ネットワークベースのデジタル通貨で、中央銀行や取引手数料がありません。プルーフ・オブ・ワークのコンセプトで、ノードはコインを探すためにCPUサイクルを消費し、その発見をネットワークにブロードキャストします。エネルギー使用量の分析によると、ビットコインの市場価値は、その生成に必要なエネルギーの価値をすでに上回っており、健全な需要を示しています。コミュニティは、この通貨がいかなる政府の手にも届かない存在であり続けることを期待しています。
「取引手数料がありません」は少々言い過ぎですが、2010年7月時点でビットコインへの理解レベルがここまで高かったことに驚きです。
ちなみに、当時のビットコイン価格はビットコイン生成のための電気料金を指標にしていたみたいで、2010年のときからエネルギーとの関連性は意識されていました。ビットコインとエネルギーの関係に関する考察記事に興味があれば、ぜひ見てください。
→ビットコインと電気エネルギーとの関係についての考察💡#33
2010年7月のSlashdotイベントの裏話🫢
BITCOIN MAGAZINEで2010年7月に関して「ビットコインが”Slashdot”され、マウントゴックスが誕生」という記事があった(正確には「デジタル・ゴールド」の一部内容転載)ので情報を要約してみます。
2010年7月7日のビットコインv0.3リリースが、フォーラム常連者の間ではビットコインを広めるいい機会だと考えていた
bitcoin.orgのサイト管理者権限を渡されていたMartti Malmi氏と一部ユーザーはSlashdotが良い発表場所だと考えていた
誰かが「ビットコインを政府の手の届かないところにあるもの」という表現を提案したときSatoshi Nakamotoは「私は絶対にそのような挑発や主張はしない」と否定
最終版は「コミュニティは通貨が政府の手の届かないところに留まることを望んでいる」と控えめな内容に変更
当時ビットコインのWebサイトは100人以上処理できないサーバーだったため、Slashdot投稿から1時間以内でサイト全体がダウン
ただ閲覧者が増えただけではなく、Bitcoinソフトウェアが多くダウンロードされ実行もされていた
“Slashdot”されたビットコインのネットワークは問題なく稼働
記事を読むと、2010年7月の盛り上がりの雰囲気がより伝わってきます。Satoshiは「政府の手に届かない」という表現に強く否定的だったのが印象的です。まだ生まれたてのビットコインを大事に育てていきたいといった気概を感じます。
あなたもDuneでビットコイン分析してみよう🙌
色々と脱線しましたが、2010年7月あたりのブロック報酬急増のデータの裏には、ビットコインのおもしろい歴史が詰まっていました。
ビットコインのオンチェーン分析をしたからといって、直接的に儲かるとかそういうのはあまり無いかもしれません。一方で、誰でもビットコインに関するデータを可視化しやすくなったのは良いことですし、非エンジニアでも手を動かしながらビットコインへの理解度を高められていいなと思います。
今回僕が分析した過去の異常値の振り返りもできますし、トランザクション手数料の未来予測の参考にもなったりします。ビットコインのヘルスチェックの窓口が増えたように感じます。
ドキュメントは英語ですが整っていますので、興味ある方はDuneへの第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?
ビットコイン関連指標まとめ(Dune):ビットコインについてDuneでできそうなことが一通り載っています。本記事はほぼこちらのSQLクエリを参照
SQLでビットコイン分析する方法(Substack):上記指標制作者の記事で、SQLクエリの説明が書いています
今週のビットコイン関連ニュース⚡
「ビットコインの億万長者」からSECの請求まで: Winklevoss兄弟の簡単なクリプトの歴史
現在、Winklevoss兄弟のGemini Earnに関連してGenesis、Grayscale Investments、Digital Currency Group(DCG)、周りが大変な状況です
SECはGemini Earnに対し、証券法違反として訴求しています
Winklevoss兄弟はビットコインの初期投資家であり、彼らの簡単な歴史が上記ニュースにまとまっています
ミス・ユニバースのエルサルバドルが巨大なビットコインのスタッフを抱えてステージを歩く
ミス・ユニバース71のエルサルバドル代表であるアレハンドラ・グアハルドはビットコインをテーマにした衣装を着ました
海外のノリを感じます
エルサルバドルは主要なビットコイン法を可決し、「火山債」に道を譲る
エルサルバドルは暗号資産による債務の譲渡または発行を法的に保護することを目的としたデジタル資産法を承認した
この法案は、ラテンアメリカの国が国債の支払いと提案されたビットコインシティの建設に資金を提供するために使用したいと考えている「火山債」としても知られるビットコイン担保債の法的枠組みも提供する
賛成 62 票、反対 16 票で可決
Blockstreamが手掛けるLiquidネットワーク10 億ドルの債券を発行することになる模様
政府の初期提案では、火山債は米ドル建てで、5 年間のロックアップ期間で 10 年間年利 6.5% を支払うと同時に、投資家が国に市民権を取得するようです
どんな感じになるかわかりませんが、色々実験していておもしろいなと思います
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過去の記事:
#33 ビットコインと電気エネルギーとの関係についての考察💡#33
#31 なぜビットコインにブロックチェーンが必要か?時間との関係⌛#31
#30 Hyperbitcoinizationとは?歴史と個人的感想📜
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