こんにちは、もやしししゃもです。
SNSなどを見ていると「価値」と「価格」について混同している人は結構多いかと思います。チャートを見て「BTCの価値が落ちてる/上がってる」とかですね。マナー講師みたいに細かい所作を修正したいとかではないですが、「価値」と「価格」を考え方として区別できると商品購入の指針が立てやすくなったり、ビットコインについても理解がしやすくなるかもしれません。
「価値」と「価格」は英語にすると「Value」と「Price」になるかなと思います。僕も以前は似たようなものだと思っていましたが、今ではしっかりと区別できるようになりました。僕の観測範囲に限られますが、ビットコインに理解がある人は価値と価格を分けているように思います。
1BTC = 1BTC
この記事では、「価値」と「価格」を区別してみて、価値と価格に関する人間特有の心理効果をを一つ紹介します。そして、ビットコインにおける「価格」と「価値」の関係性について考えます。
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価値と価格を区別してみる🦀
価値と価格は一見似たような意味合いに思えますが、違いがあります。価値と価格について、一旦僕の考えに基づいて区別してみます。
価値
人々がある対象に感じる大切さ、必要性、重要性、意味、思い入れ、信念などを表します。例えば、健康、水、平和、自由、身内の形見など「価値がある対象」は金銭的なものに限られず個人ごとに色々な種類があります。
つまり、価値は各個人の考え方や感情に基づいて決まります。
続いては価格についてです。
価格
価格は貨幣を使って商品やサービスを購入する際に支払われる金額を指します。「1,000円」のように数値化されている指標です。似たサービスや商品であってもコスト、需要と供給のバランス、競合他社の価格によって価格は異なります。基本的に価格というのは需要と供給のバランスで決まります。
つまり、価格は売買の際に必要となる金銭的な数値指標です。
価値は「各個人の考え」であり価格は「金銭的な数値指標」です。したがって、価値は個人の考えごとに異なり、価格は時と場所やコストなど周辺環境によって異なります。個人的に、価値は「内在的」であり、価格は「表面的」です。
価値が高くても価格が高いとは限らない💧
価値が高くても、価格が高いとは限りません。
例えば「水」です。水は人間が生きる上で必要です。人間は食べ物がなくても2~3週間生きられるらしいですが、水を接種しないと4~5日で死んでしまうそうです。そんな生きる上で価値の高い水の価格はというと、東京の水道水で1Lあたり約0.24円です。ペットボトルのミネラルウォーターでも500mlあたり100~150円くらいです。
価値が高い水が比較的安価に得られる理由は色々あります。水道周りのインフラが整っている、日本は川が多く雨も降る、ダムなどの施設も整っているなどでしょうか。水には一定の需要があるものの、それを上回る供給が用意されているため、安く水を得ることができます。
一方、ほとんど雨が降らない砂漠や、富士山の頂上付近などの水が少ない場所では、水の価格が高かったりします。水の価値は変わりませんが、価格は時と場所、コストや環境などによって変動します。
また、逆に価格が高くても価値が高いとは限らないものもあります。
1円の価値の変動💸
日本の法定通貨の単位である「円」は価値と価格がイコールに思えるかもしれません。しかし、為替市場で円安や円高などドル建てで見ると円の価格は変動したりします。
また、時代とともに「円」の価値は意外と大きく変動しています。
参考:昔の「1円」は今のいくら?1円から見る貨幣価値・今昔物語
明治時代の1円 = 令和の2万円
大正時代の1円 = 令和の4千円
昭和2年の1円 = 令和の10円
1円で買えるものは時代とともに変化します。1円という数値があり、円の価値変動がわかりにくいので「物価」みたいな形で商品の価格から円の価格を概算したりしています。(物価が上がった時に、円の価値減少を感覚として捉えにくくなるので、個人的に物価という表現は好きじゃないです。)
円含めて、貨幣の裏側にある本質的な価値は「購買力」だと僕は思います。
購買力(こうばいりょく、英: Purchasing power)とは、1単位の通貨で購入できる財やサービスの量のことである。
Wikipedia(購買力)
全体の購買力が一定の場合、貨幣をインフレさせると1単位あたりの貨幣の購買力が下がります。購買力は見えるものでもないですが、僕は購買力をエネルギー的な感じで捉えていて、エネルギー保存則のように購買力がどこに移っていくかを時々考えたりします。
関連記事:「貨幣の哲学」から学ぶビットコインの貨幣性💵#34
関連記事:ビットコインと電気エネルギーとの関係についての考察💡
価値と価格が関係するウェンブレン効果👜
ウェンブレン効果は簡単に言うと「対象の価格が高いほど需要が増加する心理効果」です。これは、その人の中で「価格 = 価値」に近い状況なんじゃないかと思います。
ブランドバッグや高級車とかがそうですね。セレブ達はめちゃくちゃ高いものを買い、民衆に見せびらかして心を満たします。逆に、同じ品質でも安物のブランドであれば買われません。ブランドは高ければ高いほど嬉しいのです。
また、ビットコインも価格が上がった時に買いたくなる人が増えることがあります。FOMO(Fear Of Missing Out)というやつです。
価格が上がると「もっと上がってしまうんじゃないか、今すぐ買わないと!!!」という状況になり、価格が上がるだけでその人の中で価値が上昇します。結局、価格と価値のずれが大きくなって、正常化に向けてビットコイン価格が下落します。
人間の価値観は結構あいまいなものです。
ビットコインにおける価値と価格の関係性💰
ここまで、価値と価格の違いについて考えてきました。次はビットコインについて考えていきましょう。わかりやすくするため、ビットコインの価格をBTC価格としています。
「BTC価格はビットコインの価値ですか?」という問いがあった場合、僕であれば「BTC価格は一部ビットコインの価値に影響を与える可能性があるが、BTC価格とビットコインの価値は同じではない」と答えるかと思います。
BTC価格は単なる額面🎟️
まずは、BTC価格について考えます。
「BTC価格」は需要と供給のバランスで決定します。ビットコインが始まった時期はBTC価格はありませんでした。その後、ビットコインを生成する電気代を加味して、BTC価格が表現され始めます。現在では、投資家やマイナー、ビットコイン決済対応店舗、ビットコインユーザーなど、様々な人々の間で売ったり買ったりして需給バランスが動いています。
BTC価格がビットコインの価値へ与える影響としては、マイナーのインセンティブです。
例えば、1BTCの価格がいきなり1円になると、電気代やマシン代などのコストを払っているマイナーは採算が取れず、大量のマイナーが辞めてしまいます。マイナーがいなくなることにより、51%攻撃などのセキュリティリスクが上がり、ビットコインの価値は大幅に減少します。
関連記事:GHashの歴史とマイニングプールのリスク⛏#37
しかし上記は極端な例であり、実際はBTCの価格が下がって一部のマイナーが辞めることで、他のマイナーの収益性が上がりますし、別のマイナーが参入してくることもあります。確かに今となってはBTC価格が1円になったらリスクが上がりビットコインはほぼ無価値になるため一定の価格は必要ですが、BTC価格が価値に与える影響は間接的です。
また、BTC価格のボラティリティが大きいことは、ビットコインの価値にはあまり関係が無いと僕は思います。確かに、現状決済としての使いづらさがありますが、ビットコインの稼働において特に影響を与えるものでもありません。強いて言えば、マイナーが腰を据えて参加しやすいかどうかでしょうか。マイナーがビットコインの価格と価値の接続点になっているように思えます。
BTCの価格について考えると、時価総額が正確に対象の価値を捉えてはいないことがわかります。時価総額が1位とか、正直どうでもいいです。一定の規模比較ができるイメージです。
ビットコインの価値はネットワーク全体💻
価値は「各個人の考え」ですので、ビットコインの価値は僕の主観が入っているのでご留意ください。
ビットコインは「P2P電子通貨システム」ですので、ビットコインの価値はこのシステム全体になります。この説明だとフワフワした感じになるので、わかりやすく言うと「P2Pで電子的にいつでも送金を実現できるシステム」がプロダクトとして価値かなと思います。他にも、下記のようないくつかの付加価値があるように思います。人によっては、下記に価値を感じる人がいるかと思います。
パーミッションレス
分散システムによる非中央集権化
鍵ペアによる匿名性
暗号を活用したセキュリティ
比較的低コストの送金
トラストレスへのこだわり
Satoshi Nakamotoの匿名性
有限枚数による希少価値
基本的に、BTC価格はビットコインの価値とは別のものとなります。
個人的にこの中で「有限枚数による希少価値」は特殊だと思います。唯一、ビットコインの需給に絡んで価格に影響を与えるからです。ビットコインをトラストレスに実現する上で、4年に一度の半減期を通じて21Mの枚数に制限せず、ブロック報酬固定で無限に発行されても一見問題なさそうな気がします。ビットコインの希少性についてもう少し深堀りしてみます。
ビットコインにおける希少性の役割の考察💎
みなさんご存じのように、ビットコインの発行可能な数量は約2100万BTCに限られています。「約」と書いているのは、正確には2100万BTCよりほんの少し少なくなるからです。
希少性はビットコインの供給を下げるため、需要が変わらなければ相対的に高まってBTCの価格を引き上げる可能性があります。しかし、BTC価格は価値への関係が薄いと書きましたが、希少性はビットコインにおいてどのような役割があるでしょうか?下記に4つリスト化してみます。
初期参加者へのマーケティング
4年に一度の認知起爆剤
ユーザーがインフレにセンシティブになる
マイニング加速によるインフレ懸念の払拭
初期参加者へのマーケティング👶
ビットコインのマイニングで、価格が付いていなかったので最初は特に金銭的なメリットはありませんでした。ただ、「電子的な数字が最初は多くもらえるよ」という感じで、初期マイナーのやる気の源泉になっていたのかもしれません。
固定報酬であれば「今やらないと!」という焦燥感を押し出すのに欠けるかなと思います。
2012年に半減期のないビットコインについて、会話しているスレッドがあったので共有します。会話中にSatoshiはいませんが、結構みんな希少性が好きみたいです。
Treazant の紹介 - 報酬半減なしのビットコイン
4年に一度の認知起爆剤🤑
実際、約4年のサイクルごとにBTC価格が上がっています。ビットコインの半減期の影響が無いとは言えないでしょう。実際に供給減少による価格上昇が原因かと思います。
価格が上がるとニュースなどで取り上げられたりして多くの人の目に付きます。僕も2017年冬の価格上昇でビットコインを知り、暗号資産に興味を持ちました。供給をいじれば価格に影響が出ることをSatoshiは知っていると思うので、もしかしたら認知マーケティングとしてシステム化した可能性もあります。
また、4年や21Mなど色々数字がありますが、Satoshiが色々考えて直観で決めたんじゃないかと思います。
My choice for the number of coins and distribution schedule was an educated guess. It was a difficult choice, because once the network is going it’s locked in and we’re stuck with it.
コインの数と配布スケジュールに関する私の選択は、経験に基づいた推測でした。これは難しい選択でした。なぜなら、一度ネットワークが稼働すると、その選択は確定され、私たちはそれに縛られることになります。
— Satoshi Nakamoto
(Bitcoinに手数料があることについて)
Right. Otherwise we couldn't have a finite limit of 21 million coins, because there would always need to be some minimum reward for generating. In a few decades when the reward gets too small, the transaction fee will become the main compensation for nodes. I'm sure that in 20 years there will either be very large transaction volume or no volume.
はい。そうでなければ、2,100 万コインという有限の制限を設けることはできません。報酬が少なくなりすぎる数十年で、取引手数料がノードの主な報酬になるでしょう。20 年後には、取引量が非常に多くなるか、まったくなくなると確信しています。
— Satoshi Nakamoto
コミュニティがインフレにセンシティブになる🤨
ビットコイナーを見ているとわかるように、有限であることにこだわりがあり、法定通貨やその他暗号資産などのインフレに対して批判的です。これは、ビットコインがコミュニティに対してインフレに関する教育を施し、同時にインフレへ違和感を感じる人達をビットコインに惹き付けているんじゃないかと思います。
もし、ビットコインがブロック報酬固定でインフレ通貨だった場合を考えてみます。インフレへのコンセンサスが緩くなり「発行量もう少し増やしてもいいんじゃない?」みたいな考えの人がコミュニティに集まってきて、将来的に既得権益性のあるリスク貨幣になりかねません。
現在集まっている多くの割合のビットコイナーは、将来の状況によりますが「約2100万BTC以降の追加発行」を高い確率で拒否するんじゃないかと思います。これはビットコインの存続において重要です。ビットコインに興味を持つであろう人間(コミュニティ)もビットコインのシステム構造の一部かと思うと面白いです。
マイニング加速によるインフレ懸念の払拭⛏
難易度調整によって、ビットコインは10分に1ブロックがマイニングされます。しかしながら、当然毎回ちょうど10分というのはほとんどありません。下記の図を見てわかるように、ブロック時間は10分を下回っていることが多いです。
もし、ブロック報酬が固定数量の場合、将来何BTCが存在しているかわかりません。もしかしたら、マイニングマシンの性能が2週間ごとに2倍に成長していく可能性も0ではありません。そうなると、5分に1ブロックが採掘され、インフレ率が約2倍になります。外部要因によって何が起こるかわからないものは、保有者としては怖いです。
しかしながら、いつかブロック報酬が0になるという設定をしてあげると、人類の技術が飛躍的進化を遂げて難易度調整が追い付かないくらいビットコインがマイニングされたとしても、だんだんと発行枚数が半減していきいつかは約2100万枚で収束します。外部要因である技術発展のリスクを排除し、利用者に安心感を与えることができます。
ビットコインの価値は大きくは変わりにくい🌎
ビットコインの価格は現状ボラティリティがありますが、システムとしても希少性としてもビットコインの価値は大きくは変わりにくいと思います。
The nature of Bitcoin is such that once version 0.1 was released, the core design was set in stone for the rest of its lifetime.
ビットコインの性質上、バージョン0.1がリリースされると、そのコアデザインはその生涯にわたって固定化されます。
— Satoshi Nakamoto
もちろん、一部アップデートなどもありますし、Lightning Networkなどの発展などビットコインの価値に影響を与えるものはいくつかあります。ただ、ビットコインは価値の保存に一役買っていると思います。
個人的に、ビットコインは「価値のステーブルコイン」だと思っています。よく使われる下記のミームはビットコインの価格ではなく、価値に着目していることがわかります。(1円は将来も1円ですか?)
1BTC = 1BTC
まとめ:価値を大切にしよう👍
価値と価格の違いや、ビットコインにおける価格と価値についても記載しました。チャートとにらめっこをして価格を見ていくのもいいですが、ビットコインだけではなく他の投資や商品・サービスにおいても価値を理解して自分なりの価格付けができれば理想だと思います。
割安に感じる価値を買えばいいということです。価値と価格が同じではないことを理解していれば、各個人の考える価値に対して適切なサービス購入もできることでしょう。
また、家族や友情などの人間関係、あとは筋肉などお金で直接買えない価値もあったりします。価格なんていうものは所詮表面的な数値でしかありません。殺人が罰金のみで許されないように、人間はやっぱり精神的な生き物です。価格だけに惑わされず、価値を大切にして生きていければ良い人生になるんじゃないかなと思います。(謎の締めくくり)
今週のビットコイン関連ニュース⚡
Bored Ape の所有者が 169,000 ドルの NFT を燃やして、イーサリアムからビットコインに移行
BAYC #1626をEthereumからバーンし、BitcoinのOrdinalsに移したようです
EthereumのNFTがBitcoinに来るのは個人的に意外でした
Bitcoinの技術文書用の検索エンジン
検索してみたら、フィルタリングなどもあったりして、使う人によっては嬉しいのかもしれません
RGBとTaroに関するレポート(Diamond Hands)
ビットコイン上のトークン発行に関して、RGBとTaroについてまとめられています
おまけ:nostrのロゴを作った🐦
一部界隈でnostrが流行っています。LNも使えたりして個人的に結構面白いなと思っていて、遊びでロゴを作ってみました。
nostrの特徴を表現したロゴが作れたらなと思いました。文字バランスがむずかったw
ダチョウは英語で「Ostrich」と言うらしく、nostrと少し似ています。起源はよくわかりませんが、Nostrichとか言っているのも見かけます。
nostr日本コミュニティのscrapboxもあったりします。試行錯誤で楽しんでいる感じです。
→nostr画像素材
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FTXの件で価格が暴落したとき、『けど、ビットコインは何も変わってないよな』と思えたので、お金は減ったけどメンタル的には意外と平気でした。ビットコインの価値について自分も理解できてるのかなって思ってます(^-^)